【読書メモ】やめたくてもやめられない脳-依存症の行動と心理-

本記事の概要

 廣中直行「やめたくてもやめられない脳-依存症の行動と心理-」の内容のメモと読んだ時に感じた内容や考えた内容をメモとして残しています.

 本書は,薬物依存をはじめとして人が「やめたくてもやめられない」状況に陥る際のメカニズムを脳神経科学・行動科学の研究成果を撚り合わせつつ説明しています.

「やめたくてもやめられない脳」の目次

本書の目次は下記の通り(amazonの本書のページを参照).このタイトルからわかる通り,筆者の廣中先生の文章は物語的な面白味もあるものとなっています.

  • 第1章 やめたくてもやめられない
    • 1. 「ハマってしまう」という問題
    • 2. 依存か嗜癖か中毒か
    • 3. なぜ薬をやってはイケナイのか
    • 4. 化学からのアプローチ
  • 第2章 イオンの海の中で − 神経の仕組み
    • 1. 興奮を伝える神経細胞
    • 2. 情報は脳内を駆けめぐる
    • 3. なぜ覚えたり忘れたりするのか
    • 4. 脳とは何か
  • 第3章 「欲しくなる」脳
    • 1. 体の欲求
    • 2. 魅力とその逸脱
  • 第4章 心のデフレスパイラル – 強化学習
    • 1. どの様に学習するのか
    • 2. 認知系と報酬系
    • 3. 嫌なものから逃げられるか
    • 4. 行動のダイナミズム
  • 第5章 メンタルフレームワーク
    • 1. 記憶と依存のめくるめく関係
    • 2. 行動を惑わす刺激
    • 3. 論理の落とし穴
  • 第6章 心の進化が生んだもの
    • 1. 進化について
    • 2. 動物と植物の怪しい関係
    • 3. 無脊椎動物の世界
    • 4. 脊椎動物のたどった道
    • 5. ヒト科ヒト族ヒト
  • 第7章 人間を見る目
    • 1. 薬物依存問題の裾野
    • 2. 変わりゆく薬物乱用
    • 3. 精神は展開するか
  • あとがき
  • 引用文献

所感・メモ

 総じて,学部,院時代の講義を思い出して,懐かしい気持ちになりました.あまりにも取り扱われている内容が母校のいくつかの講義と同じすぎるため,筆者の経歴を調べたのですが,全く関係者ではなく,母校での勤務経験はなさそうでした.母校の先生が筆者のお弟子さんとかかなぁ

(注意)解説記事ではない(し,できれば読んでもらった上であそこってこういうことかな?みたいな会話ができる人を作れたら嬉しい)ので,内容については詳しくは書きません.あくまでこの章は何の話してたっけな〜の自分用の思い出しフックとして残しております.

第1章 やめたくてもやめられない

第1章では身体依存と精神依存の区別から,人が嗜癖,依存になるメカニズムについて解説されています.ここで,身体依存と精神依存とは,本書では下記のように説明されています.

身体依存体が薬漬けの状態になれてしまい,一定量の薬物が体内に存在していないければまともな生理機能が営めなくなった状態
精神依存「薬が欲しくてたまらない」状態,すなわち薬の効果-特に精神薬理効果-に強迫的な欲求が存在している状態
「やめたくてもやめられない脳」第1章から引用

身体依存は,まともな生理機能が営めない状態,ということから薬を用量以上に摂取することに対する体の反応で,精神依存は,薬の効果に対する強迫的な欲求であることから,後天的に学習されるものという違いでしょうか.

第2章 イオンの海の中で – 神経の仕組み

この章ではイオンチャネルについての話から始まります.イオンチャネルの開閉から,神経伝達物質,受容体が人の気分をコントロールしているのでは??という部分を解説した上で,3章以降の論説を展開するための準備としています.

 覚醒剤などの薬物も神経伝達物質や受容体に関連するため,人が薬物に依存するメカニズムを生理学的側面から解き明かせるという可能性が示唆されています.むむむ,依存だけで相当広い学問領域からアプローチできるのですね,,,

第3章 「欲しくなる」脳

この章では,体内の恒常性維持機能(ホメオスタシス)「欲求」をキーワードにやめたくてもやめられないについて解説されています.

第4章 心のデフレスパイラル – 強化学習

この章では,人間や動物が持つ能力である「学習」をキーワードに,やめたくてもやめられないについて解説されています.

第5章 メンタルフレームワーク

この章では,「記憶」「認知」をキーワードに,やめたくてもやめられないについて解説されています.

第6章 心の進化が生んだもの

この章では,やめたくてもやめられない脳が,どのような進化を辿ってきたかが博物学の観点から説明されています.今度は博物学が出てきたぞ!!!学際!!筆者の学識どないなっとんねん!!

引っかかった部分・驚き箇所

  • 人間と生活することで,犬も神経症なる→元々神経症になる可能性は犬も持っているが,人と生活することでその能力が(不幸にも)引き出される
  • 霊長類の脳の進化と社会構造の複雑化はどっちが先か?という問いに対して,社会構造が先ではないかと推測されている
    • 推測の手がかりは,社会構造が複雑だが,脳がそこまで発達していないprimitiveな霊長類が存在すること

第7章 人間を見る目

 ついに最終章.この章では,薬物依存と社会の問題について論じられています.依存の対象を薬物以外にも広げ,途中でホモルーデンスまで出てきます.依存からホモルーデンスはマジカルバナナやったら8ターンくらいの開きがありますね...大学~院時代の断片的な知識が総動員されており,この章も読み応えがあります.

以上になりますが,,,神経科学,生理学,心理学などの知識がなく理解できた部分が多くないものの,「依存」という現象を,複数の角度から説明しようとする試みであることから,大変読み応えがあります.時間あけて,また読み返したい!

書籍の情報について

以下のサイトから購入が可能です.中古ばかりがヒットしていますね,,,

私が学生の時に読んだ本なのに既に絶版になっているのかもしれません,,,良い本なのに,,,

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